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【談話】

歯科医療費抑制政策と医療DXの道具にする診療報酬改定に抗議し、
国民に良質な医療を提供するための政策に転換するよう求める

2024年2月19日
大阪府歯科保険医協会
政策部長 戸井逸美

 厚生労働省の諮問を受けて、2月14日中央社会保険医療協議会が答申した。歯科の改定率がプラス0.57%と低く抑えられた現状では、医療従事者に適切な賃上げを実現することはおろか、歯科医療の質を担保することも、歯科医療機関の危機的な経営状況を改善することもできない。

 今回の改定は、手かせ足かせのついた医療従事者の「賃上げ」と政府のすすめる「医療DX」を中心に行われ、全ての歯科医療機関が享受できる内容の点数改定はわずかであり、小規模医療機関にとってはかつてない厳しい改定となった。

 政府は、若手歯科医師や歯科衛生士、事務職員、歯科技工士への賃上げ対策としてわずかなプラスの改定率の中から0.28%を手当てするとした。しかし提供される医療の質に関係なく、医療機関の規模によって患者負担に差をつけることに合理性はない。小規模医療機関を淘汰することにもつながりかねない。人件費の引き上げは、特掲診療料や技術料を適切に評価することで医療機関が対応できるようにするのが筋である。 

 歯科技工士の長時間労働・低収入の原因は、チェアサイドの技術料をはじめ、多くの部分で不採算となっている歯科の低診療報酬に原因がある。抜本的な点数引き上げと適切な委託技工料が歯科技工士の手に渡るような実効性のある取引ルールを確立すべきである。

 また、中医協で廃止が論議となった補綴物維持管理料は、単冠の金属冠だけが外された。全ての補綴物について2年間の再作製禁止を撤廃すべきである。光学印象のCADInへの適応やICTを活用した歯科技工所との情報共有が新設されている。歯科技工士の負担軽減や新たな評価に道を開く側面を見据えつつ、高額な設備投資などのコスト負担が中小ラボの経営を圧迫しないように配慮すべきだ。 

 医療DXの推進に関する点数が議論されていることも問題だ。私たちは、国民・医療現場が求める医療等のICT化による医療の質の向上には賛成の立場だが、強引なデジタル化による国民皆保険制度の変質や地域医療を破壊する国の医療DXには反対する。開業医を早期リタイア追い込むやり方は医療の提供体制を整備する責任ある政府としてあってはならない。

 医薬品については、長期収載等の先発品を使用した場合、後発品との差額を患者負担とする選定療養化が示された。これは、医薬品の保険外しであり絶対に容認できない。そもそも現在の医薬品の供給不足は、低すぎる後発品の価格など政府の政策によりもたらされたものである。政府の政策失敗のツケを国民に押し付けることはあってはならない。さらなる歯科の補綴外しにつながらないか危惧する。歯科の補綴外しをはじめ保険医療にさらなる選定療養への拡大が危惧される。

 COVID-19が流行する前から歯科医療機関では医療法の規定のとおり、日々感染防止の対策の実施と研鑽を積んできた。歯初診の届出・未届医療機関に関わらず、ほとんどコロナ感染症によるクラスターが出ていないことはその証左である。初再診料に課されている施設基準はただちに廃止すべきである。また、この間の診療報酬改定で医療安全対策および院内感染防止対策の費用は評価済みとすることには承服できない。2007年の中医協で示された基本診療料に必要なコストの試算に立ち返るべきである。加えてその後の物価高騰、人件費の上昇に見合った引き上げがなされてこなかった現状に鑑みて、初・再診料は大幅に引き上げるべきである。

 歯科診療報酬改定は、毎回十分な財源を確保しないため財源を生み出す必要から、技術が包括化され実質的に廃止されたり回数制限がされるなど、歯科医療に歪みをもたらしてきた。今次改定でも同様のことがいえる。歯科医療の質を抜本的に引き上げるためには、見合った診療報酬の引き上げが必要である。

 大企業の優遇や天井知らずの大軍拡路線によって社会保障費が抑制され、国民の命と健康が危ぶまれる事態はあってはならない。私たち大阪府歯科保険医協会は、歯科医療費抑制政策と、医療機関窓口をデジタルトランスフォーメーション促進の道具にする診療報酬改定に抗議し、国民に良質な医療を提供するための政策に転換するよう、強く求める。





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